ブログ

2019年1月海外視察(学校教育ICT)レポート


帰国後すぐに東淀川区でタウンミーティングが開催されるため告知活動に勤しむなど、多忙を極めており公開が遅くなりました。

また、昨年のアムステルダムのレポートは長すぎてあまり読まれていないのではないかと思われるので…1本の記事にまとめてみようと思います!!

視察目的・概要

昨年、アムステルダムのイベントに日本人として初めて参加してきました。世界中の教育関係者が集まり、将来のあるべき教育の姿というものに関してディスカッションをしたりしながら共通認識を作り、各国で実践して次回その報告共有をしていくというような流れで、世界的に協力しながらチャレンジしていこう!!と思いをひとつにしてきたところです。

今回は打って変わって、日本国内に点在しているキーパーソンを集結させて団体を構成し、実際に海外の教育現場を生で体感したり、世界最大規模のICT展示会「BETT」に参加して最先端を体感したりした上で、キーパーソン同士での議論を深めていくというような感じでした。結論から言うと、大阪の未来や日本の未来にとって非常に重要な1週間になりました。

参加者を一部だけ紹介します

今回の参加者構成は、外部有識者(政府関連委員会メンバー)・教育現場(学校長)に加えて、インフラ系企業やサポート系企業の方も来られており非常に有意義な議論ができました。全員を紹介したいところですが、レポートが長くなりすぎるので、その中でも特に2名を紹介します(勝手にw)。

赤堀会長は業界では最重鎮とされる方ですが、非常に柔軟な考え方をお持ちで驚きました。初見のイメージとは全く違ったので、ディナー中の討論中に「すみません、日本の教育ICT業界のことを正直ナメてました!!笑」とカミングアウト。。。笑

僕のような若輩者に対しても、「関西のキャラクターって感じで良いね!!」と、受け止めてくださり感謝です。
各視察先でも多数質問されており、業界最重鎮の方の真摯なアタックぶりを見て、日本の未来は決して暗くないと確信しました。

佐藤先生はEdTech(Education × Technology)の分野における第一人者的な存在です。これまで僕が議論させていただいた方の誰よりも、この分野における議論経験値が高いことがすぐにわかりました。この出会いは衝撃でした。

今の僕の姿と過去の佐藤先生の姿が重なるということで、無条件で応援したいとおっしゃっていただきました。佐藤先生とはホテルのBARの閉店時間を過ぎても話し込むぐらい色々議論させていただき、志や理念の部分が完全一致していることがわかりました。これから大阪において、更には日本全体において非常に重要なテーマがEdTechですが、その中心で活躍される方であることは疑いようがありません。

著書『EdTechが変える教育の未来』は必読です。

ちょっと調べただけで、とんでもない数の経歴がありました。笑

<政府の会議での委員歴、 その他活動>
・内閣官房 教育再生実行会議技術革新ワーキンググループ 委員
・経産省 未来の教室とEdTech研究会 座長代理
・経産省 学びと社会の連携促進事業 アドバイザー
・経産省 我が国産業における人材力強化に向けた研究会 委員
・総務省 先導的教育システム実証事業PMOプロジェクトマネージャー
・総務省 地域IoT実装推進タスクフォース 構成委員
・総務省 スマートスクール・プラットフォーム実証事業 評価委員
・内閣府 RESAS普及専門家 委員
・自民党 EdTech推進議員連盟 設立支援
・eラーニングアワード2018フォーラム 実行委員
・JMOOC将来構想検討委員会 委員
・千代田区立麹町中学校 学校運営協議会 委員長

まずは学校視察の感想から

今回、2つの学校(スウェーデンのマルモ地区にあるOxievångsskolan・ロンドンにあるTring School)に行きました。共通点は、1人1台ノートPCを所有している(家に持ち帰りOK)という部分。

完全に僕の主観的相違点は、
・プログラミング教育路線(スウェーデン)
・筆記用具アップデート路線(ロンドン)
という感じでした。

スウェーデン:Oxievångsskolan

この学校では1人1台環境(公が100%負担)が実現しており、そのデバイスを家に持ち帰ることが可能だということだったので、家庭の通信環境が気になって質問をしたところ、99%Wi-Fi環境があるらしいです。残り1%は家庭のスマートフォンなどのテザリングで対応しているとのこと。

これ、大阪で実現させられるかどうかは調査して見極めるか、もしくはLTE対応端末でSIM支給するか。ということになります。おそらく、後者の方が実現は早いです。

というのも、家庭のWi-Fi環境が100%ではない場合(多分100%ではないと思う)、そしてスマートフォンが無くてテザリングができないという家庭があった場合(多分あると思う)、家で宿題をして提出することができない子どもが存在してしまうことになります。こうなると、公教育を司る教育委員会が激しく抵抗することになります。だったら、最初からLTE対応端末にしてSIM支給すれば、その問題は解決します。そこにかかる費用を算出して、どう考えるかというところが今後の検討課題かなと僕は思っています。(ちなみに、佐藤教授と議論する中では、学校のWi-Fi環境を改善するほうが優先だという主張をされて、うーーーーん、、、となっています。笑)

既に大阪市も学校のWi-Fi環境を整備していってますが、接続できる端末が限定的であることや、それに付随する基盤整備事業が思いっきり高額になっている点など納得いかない点が複数あります。ここを改善した時に費用面でどのぐらいの変化をつけることができるか。LTE端末の方向性にしてWi-Fi環境をいっそのこと捨てるか、Wi-Fi環境を改善して捻出した費用を家庭向けWi-Fiバウチャーのような形で非対応家庭に支給するか…政治・行政的パワーの必要性などを考えれば僕は前者であるべきなのではないかと思っているのですが、この点についてもっと佐藤教授と議論したかったです。

そして、実は再来週あたりに再議論する機会を与えていただきました。(佐藤教授、よろしくお願いします!)

また、この学校では教科書を持ち運ぶ必要がなく、デジタル教材にシフトしていました。この点については赤堀会長が色々質問していたのですが、日本でいう「文科省に認定された教科書」のようなものを使っているわけではなく、すべてが「教材」ということで、教師自身が使いたい教材を使うという運用をしていました。そのため、日本で実現するなら「文科省に認定された教科書(デジタル版)」のプラットフォームみたいなものが必要になりますね。その際、教科書の著作権等をどう考えるかという議論に突入したのですが、そこはサブスクリプション的な考え方でアカウント管理すれば担保できるのではないかなと思いましたが時間切れ。赤堀会長には後で個人的に見解をお伝えしておきました。

そして、プログラミング教育。

日本で実行するプログラミング教育は、プログラミング的思考を養うものなので「ビジュアルプログラミング」といって、ブロックを組み換えたりするようなものです。しかし、この学校では実際にJavascriptやPythonなどのプログラミング言語をコーディングするところまでやっているそうです。プロダンサーの動きをロボットに再現させる授業とかをしていると聞いて、驚きました。なんちゅー公立校や…

ちなみに、スウェーデンの学校がみんなこんな状況なわけではなく、最先端校ということで各国各地から視察依頼があるようです。

そして、校長先生はデジタル学校の作り方の本を出版されているようです。スウェーデン語で書いてるらしいので、日本語訳バージョンを切望しております。笑

ロンドン:Tring School

この学校でも1人1台環境(基本は家庭が負担、負担できない家庭には学校からレンタル)が実現しています。96%の家庭が自己負担していて、残り4%は学校からレンタルという形。学校からレンタルの場合は持ち帰ることができないということだったので、宿題提出などに課題が残るのと、その形はイジメを助長しかねないとか、いろんな意見が日本では出そうです。家庭負担をお願いするパターンの時は、負担できない家庭に対してバウチャー等で対応していったほうが良いかもしれませんね。

佐藤教授が「こうやって我々が視察に来るということは学校側も当然わかっているため、必要以上にデバイスを使わせようとするバイアスがかかることも考慮しなければならない」と言っていて、たしかにその通りだなと思っていたのですが、「この学校だけは確実に普段から使ってますね」という認識で僕と佐藤教授の見解が一致しました。笑

というのも、スウェーデンの学校の子どもたちが使っていたノートPCと比べて明らかに使い込まれてました。ちょっと割れてるところがあったり(笑)、汚れていたり。完全に、筆記用具のアップデート(鉛筆消しゴムノート→ノートPC)が完了していたのです。ただ、この学校では紙もペンも使ってました。そーゆーのも大事やん?みたいな感じで、飾らない感じが良かったです。子どもたちの勉強する環境は遅かれ早かれこうなるよね〜という少し先の未来を、この学校で見ることができました。

実際、授業の内容もブラウザベースの無料WEBサービスが駆使されていて参考になりました。例えば…

学習ツールと単語カードを無料で | Quizlet

Gimkit | Live Quiz Learning Game

Play Kahoot! – Enter game PIN here

educate

こんな感じのサービスを使っていました。大阪の学校視察してて見たことあるのは、Kahoot!だけです(多分)。要するに、クイズ形式で問題を問いていったり、個人戦やチーム戦でクイズ大会を開催したりなどができるサービス。やっぱり、こういうサービス使うことで楽しく学ぶことが可能だし、これぞ学校教育ICT時代の新しい学び方だと思います。

また、ここでは詰め込み教育という感じではなく、教員が予め用意しておいた設問に対してクイズ形式(自習形式)で回答していく。わからないところはググってOKみたいな感じの授業風景が目立ちました。教員は完全にteachからcoachにシフトしています。昨年オランダで世界中の教育関係者と認識を共有した未来型の教育現場がまさにここにあったという感想です。

BETTの感想

世界最大規模の教育ICT展示会、BETTに参加してきました。全体的な感想としては、佐藤教授とも認識が一致していますが「世界最先端でも、このぐらいなんだな」というところ。これはネガティブな感想でもなく、まだまだ成長する余地がありそうだという意味です。ロボットをプログラミングで動かすというようなアプローチは、もう見飽きているわけです。それ以外のアプローチが見たい。新しいEdTechの価値を感じたい、というような意味です。

その中でも、VR(Virtual Reality)から更に進化したMR(Mixed Reality)は体験としては面白かったです。

こんな感じで、自分の手をVR内で認識できるわけですが、教科によっては革命的な応用もありえるのではないかと感じました。スポーツとかでも応用できるんじゃないかなぁと思いました。

BETTの感想について佐藤教授と話していたのですが、結構色んな国がナショナルブースを出していたんです。日本としてもナショナルブースを増やしていって、EdTechを輸出していくような取り組みが必要だよねという話になりました。ただ、その際はロボットとかでは面白みもないしどうするのかという話を僕がすると、実は日本には面白い取り組みをしようとしているところがあって、そういうところを集めたイベントをしようとしているので是非来てほしいとお誘いいただきました。

どうやら今、スタディ・ログ(勉強記録)を日本のEdTechの目玉にしていこうぜ!!みたいな話があるらしく、確かにその分野だとBETTとかで日本が輸出ブース出せば面白いと思うわけです。学校現場や塾、あるいは進学後の学校、色んな学びのセクションにスタディ・ログを引き継いでいければ、もっともっと良い世界観が生まれてきそうです。どこにデータを持たせるべきだろうか?という議論も佐藤教授としていて、佐藤教授は現時点でハッキリした結論を持てていないとおっしゃっていましたが、可能性としてブロックチェーンの活用も頭に入れておられました。

Googleロンドンオフィス

Googleロンドンオフィスには、世界旅行のような感覚で色んな学びを得るための仕掛けがあるフロアがあり(書いてて自分でなんじゃそれと思いますが、本当にあるんですw)、それを体験してきました。参加者全員にノートPCが手渡され(レンタル)、Google Classroomを使いながら学習もしていくというスタイル。世界の教育現場で使われているGoogle Classroomをちゃんと使ったことがなかった僕にとっては、それだけでも非常に良い経験となりました。

AI(人工知能)とML(マシンラーニング)についての説明を受けたり、具体的に開発されているツールを体験したり。

講師をしてくれたBenは、昨年のオランダのワークショップで僕のアイディアが採用されたことを覚えていてくれました!その紹介をしてくれて、嬉しかったです。笑

最後にみんなで感想を共有。良い時間を過ごすことができました。

まとめ

たくさんの知見を得ることができました。
実際に1人1台の環境を実現した後、どういった教育現場になるのかという具体像をこの目で見ることができたことは、今後の学校教育ICT政策に大きく影響を与えると思います。EdTechの現時点での世界的な進展具合を知れたこと、そして日本のEdTechで今後起こそうとしているムーブメントを知れたことも非常に有益でした。

でも、なによりも一番は出会いです。
赤堀会長や佐藤先生だけではなく本当にたくさんのキーパーソンが参加されており、様々な議論ができたことが何よりも大きな価値だったと感じています。またみなさんとは日本のどこかでお会いして、議論の続きをしたいと思っています!

大阪市でこれまで僕がしてきた議論に関連したことで言えば、学校教育ICTの未来を見据えた時に「タブレット」は適切かどうか?というテーマは気になるところでした。佐藤教授との議論の中では、やはりタブレットはインプット型のデバイスであり、これからの子どもたちにはアウトプット能力が必要なことを考えれば外付けキーボートを足すか、ノートPCという形にするかということになるだろうという話になり、僕もそうあるべきだと思ったところです。

また、プライベートクラウドの脱却(パブリッククラウドへの切り替え)に関して、文科省のガイドラインが足かせになっているという話を僕がしたところ、佐藤教授が「実は今年中に改変する予定になっている、あれはありえないよね」と反応してくださり、あのガイドラインをちゃんと読んでいて議論できる人がいたことに嬉しさを隠しきれませんでした。笑

赤堀会長も「パブリッククラウドのほうが最終的にはセキュア」という認識で、最先端で議論してくださっている方々の認識と僕の認識が一致していることに安心し、期待が膨らみました。

国(政府)は、大きな方針を示します。
そこの委員会メンバーである赤堀会長や佐藤先生がしっかり道筋をつけてくださった後、実行するのは自治体です。その段階において、僕のような存在がしっかりと議論をリードして政策として実現していくことが求められています。そして、政策を実行する段階において重要なのが教育現場です。今回は国内でも最先端の教育現場の校長先生が参加されておりました。現場視点からのアドバイスをいただきながら実現に向かっていかなければいけません。

大阪市が先進事例を示せば、他自治体も追随し、日本の教育が変わります。国内に点在するキーパーソンを集め、海外事例を一気に共有し、じっくりと議論ができる環境を与えていただいたGoogle for Educationチームに感謝を表明し、短くまとめようとしたのに長くなってそうな視察レポートとします。

視察日程

1/21(月)
飛行機移動(関空→北京→ストックホルム→コペンハーゲン)※日本時間1/22に到着
コペンハーゲンでGoogle for Educationと議論
コペンハーゲンのホテルに宿泊

1/22(火)
バス移動(コペンハーゲン→マルメ地区)
Oxievångsskolan視察
バス移動(マルメ地区→コペンハーゲン)
飛行機移動(コペンハーゲン→ロンドン)
参加者懇親会
ロンドン東部のホテルに宿泊

1/23(水)
BETT(会場:ロンドン東部)参加
参加者懇親会
ロンドン東部のホテルに宿泊

1/24(木)
バス移動(ロンドン東部→学校)
Tring School視察
Googleロンドンオフィス訪問
参加者懇親会
ロンドン東部のホテルに宿泊

1/25(金)
参加者一部帰国のためロンドン中心部に移動
参加者懇親会
参加者一部帰国
ロンドン中心部でGoogle for Educationと議論
ロンドン東部のホテルに宿泊

1/26(土)
市政報告会inロンドン開催
飛行機移動(ロンドン→仁川→関空)※日本時間1/27(日)に帰国