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【連載:2019大阪春の陣(1)】維新と公明が物別れ…開戦目前の現場から


2019年3月7日、第23回大都市制度(特別区設置)協議会、通称「法定協議会」が開催され、事前に報道されていた通りの展開で大阪維新の会と公明党が物別れしました。

この結果を受けて、松井一郎(現:大阪府知事)と吉村洋文(現:大阪市長)が3月8日(金)18:15頃から開かれる予定の記者会見で共に辞意を表明し、大阪府知事選に吉村洋文(現:大阪市長)、大阪市長選に松井一郎(現:大阪府知事)が出馬する形になるだろうと報道されています。

そして、大阪維新の会の所属議員にも記者会見前に全体会議を開催する旨の連絡が入りました。全体会議で方針を確認後、おそらく報道されている通りの展開になるのだろうと現場も感じています。

これまでの経緯を簡潔に箇条書きで紹介

1953年(昭和28年)
この頃から大阪では「二重行政の解消」について議論が行われてきた

2015年5月17日(大阪市特別区設置住民投票
・歴史上初めて民意を問う機会が訪れた
・結果は僅差ではあったが否決、政治家・橋下徹は引退を表明

2015年6月1日(大阪戦略調整会議の設置
・自民党が大阪都構想への対案と主張していた同会議の設置条例案を提出
・大阪維新の会は住民投票の結果を重く受け止めて方針を転換し、賛成
・「都構想の対案であると主張されていた会議を一日でも早く始めるべき」
・しかし、当の設置条例案を提出した自民党は賛否を表明しなかった
・後日、自民党も賛成に転じて無事設置された

2015年7月24日(第1回大阪戦略調整会議が紛糾)
・大阪維新の会「大阪会議が大阪都構想の対案である」ということを会議の規約に明記すべきだ(当初の目的である二重行政の解消をテーマに議論しなければいけない)
・自民党「大阪都構想は反対多数で否決されて廃案となったので、廃案になったものに対案など存在しない」

2015年8月10日(第2回大阪戦略調整会議)
自民党などがボイコットし流会
・以後、「大阪会議」がまともに機能することはなかった
・それを受けて大阪維新の会は大阪都構想への再挑戦を表明
・「大阪会議での話し合いで二重行政がなくなるなんて言っていたが、自民党は何もやっていない。」

2015年11月22日(大阪府知事選挙・大阪市長選挙:W選挙)
・大阪都構想への再挑戦を掲げた松井知事候補・吉村市長候補が当選

2015年11月23日
・各メディアの報道見出しは「都構想に再挑戦へ」
・当時の自民党の幹事長「有権者の判断は都構想か否か。この思いを尊重する。」と表明
・このW選挙の民意をもって、大阪都構想への再挑戦がスタートした
・しかし、自民党は直後にスタンスを「一度否決されたのだから、勝つまでジャンケンは許されない」というスタンスに変更
・公明党だけは「民意を尊重する」というスタンスを保った
・吉村市長は公明党の対案である「総合区」の設計図も作成することを約束

2017年4月17日(大阪維新の会と公明党が合意)

2017年6月27日(第1回法定協議会)
・合意文書の通りに政局は動いた

2018年11月16日(経済効果について話し合う副首都推進本部会議)
・府市の委託を受けて経済効果を試算した教授らが試算手法や根拠を説明
・法定協議会での同議論は自公が拒否した
・そのため、副首都推進本部会議で議論することとなった
しかし結局、自公は欠席

2018年12月26日
・1年半の間、委員間協議は行われず事務方への質疑のみ
・大阪維新の会が「このペースの議論では合意の通りに履行されない恐れがある」として合意文書を公表

物別れポイントは?

2019年3月7日に開かれた法定協議会での話し合いからわかった物別れポイントは、合意書に記載されている「慎重かつ丁寧な議論のあり方」です。公明党は、これが大前提だと主張しています。そして実は大阪維新の会もその必要性は認めており、そのために委員間協議を早くするべきだと何度も主張してきました。

実際に、同会議はこれまで23回開かれてきたものの委員間協議はやっと2回目が開催されたところで、それまでは事務方への質疑に終始してきました。

事務方はあくまでも素案を提出し、素案について説明する役割です。事務方への一定の聴取を終えた後は、政治家同士で方向性を決めていくことになるのですが、約1年半という時間を事務方への質疑だけに費やし続けてきました。これに業を煮やした大阪維新の会が「時間切れを狙った時間稼ぎだ」という評価を下したのでした。

今後の展開:党利党略という批判に違和感

そもそもW選挙の結果という民意をもって都構想への再挑戦をしていたわけですし、本来は知事も市長も当然任期を全うすることを前提としていました。しかし、府市両議会で過半数議席を有していない状態で公明党と物別れしてしまった以上、これ以上前に進むことができません。2019年4月7日投開票の大阪府議会議員選挙・大阪市会議員選挙において両議会で過半数議席を獲得することが、自力で住民投票を実施するために必要となる条件です。

これに加えて、知事選と市長選を同日に行うという予測が広がっています。これを党利党略と批判する声をニュース等でも見かけますが、僕は党利党略とは全く逆の行動だと考えています。なぜなら先述した通り、W選挙をしなくても府市両議会で過半数議席を獲得すれば前に進むことができるからです。既に手にしている知事市長のポストを失うリスクは、党利党略上は不必要なリスクです。

しかし、前回のW選挙から3年以上経過していることも事実です。民意を大切にしている知事市長が、このタイミングにおいて再度問うことがより誠実な態度であると表明するのならば、リスクを承知で前を向いていきたい。そのように現場は受け止めています。

ともあれ、正式な場でどのような表明をされるのか。みなさまと共に待ちたいと思います。