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質疑:今の時代に合った教育を展開しよう


質疑の概要

言うまでもなく凄まじいスピードで変化している社会情勢の中、とりわけITがもたらしている社会へのインパクトというのは想像以上のものがあります。教育でこどもに与えていくべき能力というのも、時代の変化に応じて変わっていくべきではないでしょうか。
最近では、日本のフリーマーケットアプリ大手の某社が新卒採用で50人採用し、うち44人が外国籍の採用となったというニュースがありました。約1割しか、日本人が採用されませんでした。現在のこどもたちが大人になり社会に出たときの競争相手は、もはや日本人だけとは限らず、もしかしたら人工知能というライバルも現れているかもしれません。75%の今の職場はなくなるということも、よく言われています。今のこども達の将来のために備えてあげるという視点や責任が、現代の大人に求められていると思っています。
先日、30カ国程度の教育関係者が集う場所に日本人として初めて招待を受けて参加し、各国で行われている教育、これからの新しい時代に求められていく能力を、いかにしてこどもたちに提供していくのか、どんな実践をしているのかという勉強をしてきました。そういったことを踏まえながらの質疑です。

質問:パブリッククラウドにさっさと移行しよう

昨年から引き続きの内容となります。パブリッククラウドへの移行をしましょうよという内容の質疑です。当時答弁いただいた内容の中に、国内に限定してデータの保管を行う必要があるという内容がありました。モヤモヤしつつ、一度、プラットフォーマー側がどう考えているのか意見聴取してみようと思っていました。
そんな中、大手プラットフォーマーと対話する機会があったので話をお伺いしたところ、既に日本国内でこの課題を乗り越えた事例があるそうです。例えば金融機関。
同じように国内のデータセンターで取り扱えないとダメって制約があったようなんですが、プラットフォーマー側が「じゃあ国内のデータセンター限定で運用するように設定しますよ」という感じで対応し、実現したとのことです。
そこで、それは金融機関だから対応したのか、それとも学校現場や自治体との関係の中でもそういう対応が可能になるのかという点についてお伺いしたところ、金融機関と同様、制約の範囲内でパブリッククラウドを活用することは可能だと回答をいただきました。
プラットフォーマー側は我々が思っている以上に柔軟な姿勢でサービスを提供し始めておりまして、既に海外ではEUとの関係の中でEU一般データ保護規則(GDPR)の枠組みに準じて規約を改正した事例すらあるようです。
学校だけではなく、例えばイギリスやスコットランドにおいては、政府レベルでパブリッククラウドに舵を切っているような状態です。ここまでの流れを理解していただいた上で、改めて教育委員会に問いかけます。
現在、大阪市の学校現場においてはプライベートクラウド主義でパブリッククラウドへ舵を切ることができていませんが、踏み切ることができない障壁を列挙してください。

答弁:パブリッククラウドにさっさと移行しよう

文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」において、個人情報を蓄積する場合は日本の法令の範囲内で運用できるデータセンターの選択を求めており、教員が個人登録によりパブリッククラウドを利用した場合、海外にあるデータセンターを利用していることも想定され、パブリッククラウドを利用する場合、組織として教育委員会とサービスを提供している民間事業者との間での契約が必要になると考えられる。
民間事業者が約款に基づきインターネット上で提供する情報処理サービス等を、教育委員会が利用する場合には、事前に利用できるサービスの範囲や機密性が高いデータの取り扱いの禁止、データの保護対策など、リスクを十分踏まえた上で利用するかどうかを判断し契約を締結するなど、適切なセキュリティ対策を講じることが求められております。
さらに予告なく約款や利用規約が一方的に変更され、セキュリティ設定が変更される場合や、一度記録された情報を確実に消去できない場合に備えた対応など、当該サービスを事前に契約内容や利用規約に定めることが必要になります。
他方、平成30年6月に国においては「政府情報システムにおけるクラウド サービスの利用に係る基本方針」を示しており、クラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うものとする、という「クラウド・バイ・デフォルト」という方針が打ち出されております。
しかしながら文部科学省のセキュリティポリシーに関するガイドラインは、情報資産を機密性により分類し、校務系データなど機密性の高い情報を、クラウドサービスを利用し、外部のデータセンターとやり取りする場合は、VPN接続による通信経路の暗号化や本人認証等の高度なセキュリティ対策を行うこととされており、現在のネットワークの基盤についても見直す必要があると考えられます。
クラウド利用は経費の削減や可用性の向上につながるメリットもあることから、今後とも関連するガイドラインを踏まえながらセキュリティを十分に担保した上で、教員が利用しやすいシステムのより良いあり方を目標に、取り組んでまいりたいと考えております。

質問:ガイドラインは義務ではないのでは

今の答弁で、国がこの6月にクラウドバイデフォルトと言い出したという答弁がありましたが、そんなもんは当たり前の話で、世間ではとっくにそうなってるんです。行政の世界での動きが遅すぎるんです。これひとつとっても、そもそも日本という国そのものがこの分野では後進国であるということを示唆しています。
さて、今の答弁で出てまいりました、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を僕も読んだところ、高橋課長が答弁根拠としている文章を確認しました。でもこれ、文部科学省が作った「例文」なんです。
このガイドラインの目的のところには、こう書いてあります。

地方公共団体における情報セキュリティは、各地方公共団体が保有する情報資産に自ら責任を持って確保すべきものであり、情報セキュリティポリシーも各地方公共団体が組織の実態に応じて自主的に策定するものである。

この自主的に、がポイントです。ついでにもうひとつ紹介しますと、

地方公共団体における教育情報セキュリティの考え方として、
情報セキュリティ対策は、個人情報の漏えいリスクを軽減する観点からも重要であり、地方公共団体が自ら進んで情報セキュリティに関する意識・リテラシーを高め、主体的にその対策に取り組むことが求められる。

この主体的に、がポイントです。
要するに、大阪市として国のガイドラインを参考にしつつ、更に自主的に、主体的に発展させてもいいってことなんじゃないんでしょうか。
ついでに文部科学省のサイトにあったQ&Aを読んでみましたけど、義務を課すものではないと明記されており、加えて

クラウドサービスの活用を含め、具体的にどのような手段を活用するかは、各地方公共団体の判断に委ねられています。

とも明記されています。
そもそも国レベルでこの分野においては後進国となっているわけですから、国のガイドラインももちろん参考にしつつではあるものの、大阪市が独自に主体的にガイドラインを作成することは可能であり、むしろそれを求めたいのですが、それって不可能なことなんでしょうか。お答えください。

答弁:ガイドラインは義務ではないのでは

文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインは、各地方公共団体において標準的に対策することが望まれる事項として記載されており、国は、各学校の設置者において教育情報セキュリティの確保に万全を期すよう要請しています。
教育委員会といたしましては、ガイドラインに準拠した対策を研究し、具体的なセキュリティ対策を決定してまいります。

質問:生徒・保護者・教員間のパブリッククラウドは?

今の答弁では、ガイドラインを遵守ではなく、準拠ということであって、つまり不可能ではないということなんですよね。
じゃあ、もっと簡単に前に進めるような提案をしてみますが、先ほどの答弁も踏まえて、
・組織が発行するアカウントを使って
・学習系情報、または校務外部接続系情報をパブリッククラウドで扱っていくというのならすぐに実現できるのではないでしょうか。
すでに、国内の私立校においては、生徒・保護者・学校教員間における意思疎通ツールのひとつとして利用されはじめています。例えば、教員が児童にプリントを配って、これ親に渡しといてやと言われる、でも持って帰るのを忘れたとか、どっかいったとか、なんか理由あって渡さなかったとか、そういうことで意思疎通できないということもなくなります。既に導入した学校の保護者からは、意思疎通が楽になって非常によかったという声も出ているようです。
先程の文部科学省のガイドラインのQ&Aの中でも、

校務外部接続系システムと学習系システム間の通信については、特段規定していません。各地方公共団体の実態を踏まえながら情報セキュリティの確保に取り組んでいただきたいと思います。

と明記されています。
ちなみにこうしたことを導入することで例えばプリント配るのをやめよう的な過激なことを言っているわけではなく、こうした環境は一般社会では当たり前のことなので、生徒に慣れていってもらうためにも、利便性のことを考えてもやるべきでは?という趣旨です。
先程も触れましたがすでに国内の私立校においても導入実績がありますし、障壁もないのではと考えますが、いかがでしょうか。

答弁:質問:生徒・保護者・教員間のパブリッククラウドは?

パブリッククラウドを利用することは、経費面などメリットも多くあり、そういったことを十分意識して取り組んでいく必要があると考えております。
しかしながら、組織が発行するアカウントを使って、学習系情報、または校務外部接続系情報をパブリッククラウドで扱うことができるか、というご質問につきましては、児童生徒の学習履歴やその集計データなど、個人情報を含む機密性の高いデータを取り扱うことから、民間事業者が約款に基づきインターネット上で提供する情報処理サービス等を利用する場合と同様、セキュリティを確保する上どのような取り決めをするべきかの検討が必要であると考えております。
すぐに実現できるのではないか、というご意見ではございますが、現在、教育情報ネットワークにつきましてはガイドラインの考え方に沿いながら経費を抑制しつつ、児童生徒、教員が利用しやすいネットワークシステムの構築をコンサル事業者とともに研究しているところでございます。
そのためネットワーク基盤の見直しや、クラウドを提供している民間事業者との契約において、どのようなセキュリティ対策を求めていくのかの検討など時間を要すると考えております。

質問:ムービーファーストの方針を出せないのか

時間がかかるということでしたが、なぜ僕がここまでスピード感とパブリッククラウドにこだわるのか、です。パブリッククラウドへ舵を切ることは、子どもにとって非常に良い効果をもたらすと思っています。社会で一般的に使われているようなデバイスやアプリケーション、パブリッククラウドの環境を繰り返し使って慣れておくということそのものが、もう既に社会人になるにあたり求められる経験となってきています。
この前、オーストラリアの首都のキャンベラで学校教育ICTの統括やってる人と話してたんですが、キャンベラでは5〜6年前に全てパブリッククラウドに移行済です。どんどん海外の人材と差が開いていく一方です。大阪の子どもたちのためによろしくお願いします。

続いて、教員の負担軽減、効率化についてです。
僕だけではなく、誰もが教員の負担軽減については真剣に取り組まなければいけないと、そう考えていらっしゃると思います。僕は、学校教育ICT事業に付随したテクノロジーの活用こそが、本当は教員の負担軽減に大きく寄与するものだと思っています。
でも、現状は何か今までやっていたことに加えて新しくミッションが加えられてしまったような感じで、負担が増えてしまっているような印象を受けますし、実際にそう捉えている教員の方もいらっしゃるだろうなと感じています。
先日、各国の教育関係者との対話の中で、「これからの社会に必要なスキル」を身につけさせてあげることこそが、現代の教育に求められていることであり、それを実現するためには教員と学生の関係性・信頼性の構築が必要であると、つまり、1人1人の生徒に向き合う時間を多くしていくべきだという話がありました。
でも、そんなこと今の教員の方々にはとてもお願いできる環境ではありません。
既に教員の方々の負担が問題になっているのに、更に新しいミッションを加えるというのは無理筋だと思いますし、そうすべきでもないと思います。では、どうすればよいか?という文脈で、テクノロジーの活用が出てくるべきだと思っています。
何かを加えるのではなく、何かをやめるという発想が必要です。具体的には、授業をムービーファーストにして、教員の方が黒板に何かを書くという行為や、一斉に説明をする行為を、可能な範囲内でやめていくということが、もう可能な時代になっているのではないかと思っています。家で復習するのも、非常に楽です。さっき高見議員の質疑でもそういうのがあったと思いますけど、もう民間ではムービーで授業するようなサービスもたくさん出てきてます。
もちろん、教科によって実現できる教科、できない教科、やりやすい教科、やりにくい教科があるのはわかっていますが、そういった発想で教員の負担軽減を行っていくことが、1人1人の生徒に向き合う時間を結果的に増やしていくことにもつながると思います。
教員の負担軽減のために、ムービーファーストの方針を掲げてはいかがでしょうか。

答弁:ムービーファーストの方針を出せないのか

授業における動画教材の活用については、授業の展開に応じてどのような動画教材が有効であるか検討しながら活用を図っているところである。
また、教科・単元によって、授業の導入や展開、まとめなど動画教材をより効果的に活用する場面は異なり、児童生徒や学級の実態と併せて、多様な活用方法を研究する必要があると考える。

質問:仮に教員が独自でムービーファーストの取り組みを始めたら

今でも、動画を効果的に使っている教員の方がいらっしゃるってのは知ってまして、たしか公開授業見にいかせていただいたときもそういう場面があったような気がします。素晴らしいことです。
そこで、なんですけど。例えば教員の方が、自分の負担軽減プラス、生徒との1人1人の時間を増やしていくための取り組みとして個人的にムービーファーストの方針を打ち立ててこれを加速度的に実践した場合はどうするんでしょうか?
いや、そんな教員の方が出てくるかどうかは知りませんけど、もしそういうことがあるとしたら、僕はむしろ、先進的なことにチャレンジしているという意味で研究対象として位置づけて応援したらいいんじゃないかと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

答弁:仮に教員が独自でムービーファーストの取り組みを始めたら

現状においても、動画教材を有効に活用した「わかる」授業を実践しているところである。
教員の資質や指導力の向上に向けた実践的な研究活動に対しては、「がんばる先生支援事業」「教育センター研究指定校」などにおいて支援を行っている。
今後も、自立性を備えた教職員としてその能力を高め、教育活動で専門性を十分に発揮できるよう、研究の有効性に応じて支援してまいる。

要望:人事評価でマイナスにしないようにね

支援していくとのことでした。それは良いことだと思います。

先日の各国の教育関係者とのやり取りの中でも、今後教員はteachではなくcoachする存在にシフトしていくことになるだろうというのが世界の共通認識でした。ムービーファーストの方針でこれを実践しようとする教員がもし出てくるようであれば、それを妨げることなく応援できるようなマインドであってほしいと願います
また吉村市長が学力テストの件で物議を醸していますが、反対意見の中に「学校は学力だけを養う場所ではない、それだったら塾にだけ行けばいいやんか」「他の能力を伸ばすことも教員の仕事で、なんやったらそのために学校があるんや」というような意見もあります。実は、それも尤もな意見だと僕は感じているんですよ。両方大事なことです。
なので、「学力を養う」という点においては、一義的にはムービーファーストの方針で効率化した上で、更にそこから1人1人と向き合っていく、ここの時間を増やすことで更に学力や他の能力を養っていくという方向を取れないのだろうか、テクノロジーの活用でそれは可能ではないのかという提案をしました。
実際、個人的な話ですけど最近勉強していることがありまして、動画での授業を受けてるんですが、業界トップレベルの先生の授業なんで、説明もめちゃくちゃわかりやすいわけです。公教育って、全ての生徒が全く同じような環境ってのを必要以上に好む傾向がありますけど、そんなこと言うなら授業だってある程度ムービーファーストで共通化すべきだと思います。そしたら、先生が教えるのがうまいとかへたとか関係なくりますよね。
ご検討、よろしくお願いいたします。
あと、まさかそんなことはないとは思いますが、まだムービーファースト的な取り組みは教育委員会が研究終わってないからそんなことしたらダメとか言って、人事評価でマイナスにしたりすることがないようにお願いしておきます。

質問:習熟度別授業のグループ編成の振り分け厳密化について

習熟度別授業のグループ編成についての質疑をしていきます。
習熟度別授業は、学力を高めるという施策においてコストパフォーマンスが比較的高いとされる施策で、特に学力の低い生徒群に対して効果を発揮する施策だという研究結果があります。
ただし、学力が低い生徒群の中に、1人学力の高い生徒が混入した場合、その他の生徒が「やっぱり自分はできないんだ」というような感情を抱き、学力の向上につながらないという研究結果もあります。
そうした中、大阪市が現在実施している習熟度別授業はどうなっているかと言うと、学力によって厳密な振り分けが行われているわけではなく、最終的には希望する集団に所属できるというルールになっており、せっかく習熟度別授業という施策を展開しているのにもかかわらず、十分な効果を発揮できない可能性を有しています。
習熟度別授業というのは、優劣をつけたいがために展開する施策ではなく、特に学力が低い生徒群を救っていくために展開されるべき施策なはずなので、きちんと厳密に振り分けるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

答弁:習熟度別授業のグループ編成の振り分け厳密化について

本市では、児童生徒の状況に応じたきめ細かな指導を効果的に行うために、習熟度別少人数授業を実施しております。そこでは、一人一人の理解や習熟の程度に応じてコースやグループを編成し、指導過程に応じて指導方法を組み合わせるなど、さまざまな方法を工夫して学習指導を進めております。また、これらの指導方針や指導計画などを保護者にも示し、理解が得られるようにしております。
個に応じた指導を効果的に行うため、コースやグループを決める際には、単元に入る前にレディネステスト等を行い、教員が児童生徒の習熟の程度を的確に把握することが大切であると考えております。
また、児童生徒が自身の学習理解度を客観的に把握したうえで、主体的に学習するコースを自己選択し、自ら学ぶ努力をして、「わかった」「できた」と実感することが、学習意欲の向上につながり、学力向上につながると考えております。
習熟度別少人数授業のグループ編成につきましては、児童生徒が選択する際に教員からの適切な助言を行い、教科や単元ごとに児童生徒の理解度に応じて編成するなど、固定化せずに適切に組みかえることで、より一層効果的な指導が行えるよう進めてまいります。

質問:スーパーバーチャル習熟度別グループについて

今のお答えだと厳密な振り分けはしないつもりだと思うんですが、習熟度別授業については、なんのための施策なのかを今一度精査していただいて、教員が足りていない中でも人員を投入している大切な施策なわけなので、僕は必要だと思うので要望しておきます。
さて、この習熟度別授業ですが、ここにもテクノロジーが活躍できる素地があると考えています。現在の習熟度別授業は、あくまでも同じ学校内での話なので当然母集団が少なく、厳密な振り分けを行ったとしても、作ることが出来るグループ数が多くならない限り、振れ幅が大きくなってしまうという課題があります。今、大体学年で2つとか3つぐらいのグループ数になってるそうです。
そこで、テクノロジーを活用して、母集団そのものを広げてしまうという方法が考えられます。今やっているレディネステストなどの情報を元に、多くのバーチャル習熟度別グループを作り、そこに対して厳密な振り分けを行い、全市に配置されている習熟度別授業要員の教員の方でそれぞれのバーチャル習熟度別グループを担当していき、バーチャル授業を展開していく、ということがテクノロジーを活用すれば物理的には可能になります。
そこで、現状の習熟度別授業の体制を教育委員会から色々データをもらって計算してみました。もちろん、もっと細かい計算をしたらまた別の結果になるかもしれませんが、とりあえず今いただいているデータに基づいて計算したら、という前提です。細かい計算根拠をここでしゃべると長くなるので割愛しますが、
小学校なら基本的に小学校3年生から6年生まで、更に教科も国語と算数を同じ教員が1校につき1人の体制で担当しているということなので全市で国語と算数で100段階ずつのバーチャル習熟度別グループを学年ごとに作っても、必要教員数は100名です。ちなみに現在、小学校の習熟度別授業要員は301名です。
同じように、中学校は基本的に国語と数学と英語の3教科を3名の教員が全学年分担当しているということなので全市で各教科100段階ずつのグループを学年ごとに作っても、必要教員数は300名です。現在、中学校の習熟度別授業要員は384名ですが、元々教科担当として配置されている教員がいることに留意しておきます。
つまり、現在の人的リソースで対応できるばかりか、いただいている授業時間実績データに基づいて計算した結果、小学校中学校共に約3倍の効率化が図られまして、今は小中共通で大体1日に1時間ぐらい、何らかの教科の習熟度別授業を受けられているような計算になるんですが、バーチャル習熟度別グループを作る案だと、1日に3時間ぐらい、つまり複数教科の習熟度別授業を受けられる計算になります。僕の計算が正しければ、です。
更に、この計算だと人的リソースで見ても200名以上余る計算になります。
しかも今は2つか3つにしかグループ分けされていないのに、この案だと100段階です。現状よりも更に効果の高い、1人1人に合った習熟度別授業施策にバージョンアップすることが見込まれるばかりか、普段から教員が足りていないから育休が取れないとか、担任がいないと嘆かれる学校現場へ配置する教員の数を同時に確保することにもつながっていくものだと思われますが、いかがでしょうか。

答弁:スーパーバーチャル習熟度別グループについて

委員ご指摘の授業におけるICTの活用は、教員の負担を抑えながら、児童生徒一人一人の課題に応じた指導の可能性を期待するところである。
しかしながら、タブレット端末の整備は各校基本40台であり、また校内LANの再構築についても現在継続して実施しているのが現状である。
より1人1人の児童生徒に合った習熟度別学習を実現するためには、多様な課題の整理が必要であることから、今後ICT環境の整備も含め、現有のタブレット端末を効果的に活用し、子どもの個別の課題に応じた学習指導を研究してまいる。

質問:各生徒がデバイスを学校へ持ち込んで良いことにしませんか

まぁ今のは自分で言ってて、すごいエッジの効いた提案だとは思っていますし、こんな事例は海外でも聞いたことないですし、100段階て多すぎやろ、10段階とか20段階でも十分なんちゃうかとかも思いますが、それは置いとくとして、でも、テクノロジーの活用によって本当に教員の負担を軽減したり、こどもたちが社会に出たときに求められる能力を与えてあげたりというようなことを考えると、将来実現してそうだなとも思うんです。
さて、先ほどの答弁にもありましたけども、こうした様々なテクノロジーの活用可能性を考えていくにあたり、やはり1校40台というデバイスの数は心もとないというのが本音です。しかし、それらを全て税で負担するというのもカナリ大きなハードルです。
現実的には、先ほどの高見議員からの質疑でもあったような方法や、各家庭から持ち込んでもらうことを考えていかなければいけないと思うわけですが、じゃあそういうことをやるとして、将来的にどのぐらいのデバイス供給を想定しなければいけないのか?つまり、どの程度の予算額を想定すべきものなのかという点について、現在答えはありません。
この答えを早く見つけるためにも、現段階から、各家庭で所持しているデバイスを学校へ持ってきても良いことにするのはどうか?と思っています。スマートフォンについては議論があると思いますし熟議されるべきだと僕も思っていますが、もう今の時代、例えば僕にとってノートPCは筆記用具です。なんらか授業的なものに参加するとき、ノートと鉛筆持っていって、間違ったら消しゴムで消して…みたいなことは僕は久しくやってません。全部ノートPC使ってメモ取って、パブリッククラウドに保存して終わりです。そうすればいつでも見返したい時に見返せるし、どこにいてもアクセスできます。そしてその環境ってのは、今のこどもたちが大人になってから飛び込む一般社会では、もはや当然の環境ですよね。
シャーペンは使ったらあかん、鉛筆やないとあかん、みたいな話と同じぐらい、ノートPCでノート取ったらあかんっていうのは、ナンセンスで、これは選択肢の問題なんじゃないかと思います。もう既にそうさせてほしいという子供もいるんじゃないかと思いますし、そうさせたいと願う保護者もいるんじゃないかと思っています。
で、こういう話をすると破損や紛失・盗難等の危険性という話になります。学校は責任を負えないと。そりゃそうなので、許可制にして、破損や紛失・盗難等があった場合、学校は責任を負えませんよ、ちゃんと生徒が自分の責任で管理するなら許可しますよ、というような一文に同意のチェックでも入れてもらったらいいと思うんですよね。
というわけで、
・将来の予算額を想定するために
という目的と、
・筆記用具としての選択肢を認めてもいいんじゃないか
という点、この2つに対して答弁をお願いします。

答弁:各生徒がデバイスを学校へ持ち込んで良いことにしませんか

本市の小中学校におきましては、家庭の経済状況等、多様な生活背景を持つ児童生徒が、互いにさまざまな違いを認め合い、尊重し合いながら学校生活を送っております。
児童生徒がパソコン等の機器や装置を学校に持ち込むことにつきましては、このような生活背景の違いから、各家庭により電子機器等の保有状況が異なることや、児童生徒が高価な電子機器を持ち運びしたり、校内に保管したりする際に、破損や紛失・盗難等が発生することが課題となってまいります。
また、保護者からの申告制につきましては、多数の児童生徒がともに過ごす学校において、児童生徒が自己責任で高価な私物電子機器を使用・管理することに関して、保護者が想定する以上のさまざまなトラブルの発生が予測されますため、現状では運用が難しいと考えております。
教育委員会といたしましては、現在各学校に整備しているタブレット端末等を効果的に活用しながら、児童生徒の学習活動のさらなる充実に努めてまいります。

質問:申告制の提案、状況調査の提案

今の答弁の冒頭で、多様な生活背景を持つ児童生徒が、互いにさまざまな違いを認め合い、尊重し合いながら学校生活を送っております。っておっしゃってたんですけど、それ言うんだったら、多様な選択肢を認め合って尊重してくださいよ。ということなんです。
あと、今の答弁の状況だと、将来1人1台の環境を作る際に必要となる大体の予算額を算出することができないままなんですけど、議論を前に進めるために、状況調査を保護者向けにするべきかと思いますが、それもやらないんでしょうか?

答弁:申告制の提案、状況調査の提案

委員ご指摘のタブレット端末の整備につきまして、タブレット端末の機能を十二分に生かすには、一人1台で使用するのがよいと考えられますが、タブレット端末の全児童生徒への整備については、多額な経費が必要となることから、BYODやマルチOSの利用など情報技術への対応や、学習アプリを提供するクラウドの利用など様々な課題の整理が必要であり、また学校教育における効果も十分検討しながら今後の整備に向けて研究に取り組んでまいります。

質問:将来ビジョンについて民間に提案・助言してもらうべき

はい、まぁつまりやらないということなんです。
いやほんとにね、危機感がなさすぎるんじゃないかと思います。
もう、海外では1人1台の環境作って、未来の社会像を予測した上でスピーディーに学校教育ICTが展開されていってるところが実際にあって、どんどん増えてきている中で、日に日に、日本のこどもたちとの差が開いていってるんじゃないですかね。
冒頭で紹介した通り、もう現在でも新卒採用で日本人が1割程度しか採用されないような企業も出てきており、社会情勢は常にスピード感をもって変化していってます。止まってくれと願っても時代の変化は止まってくれるわけではありません。
我々は、こども達が社会に出た時に困らないようにしたくて学校教育ICTを推進しているわけですが、今日の質疑のやり取りでもそうですけれども、これまで教育委員会といろんなやり取りをしてきている中では、どうも場当たり的な、その場しのぎのような、学校教育ICTという施策を推進しなきゃいけないから学校教育ICTをやっているような印象を受けます。
で、それってなんでなんかな?と考えてたんですけど、将来に向けたあるべき学校教育ICTのビジョンがそもそも共通認識として存在していないところだという結論に至ってます。ある程度僕も海外事例などを仕入れて研究したりしてきていますが、その中でイメージしているような将来ビジョン、あるいはその流れの中で更にもっと進化してこうなっていくだろうなというようなビジョン感との乖離がありすぎて、話が噛み合わないんだと。
そこで冷静に考えた時、そういう将来ビジョンって、一体誰が作るべきものなのだろうかということです。教育委員会って、そもそも教育が専門なわけで、そんな急に時代変わってICTやらなアカンていきなり言われても、そら無理やというのは当然やと思うんです。
なので、こういう大きなビジョン的なところについては本来教育委員会で考えなくても良いんだろうと思うし、もっと言うと役所組織が研究して考える性質のものでもないんじゃないかなと。ですから、そういう部分については民間へ外部委託するなど連携して提案や助言をしてもらうような方向で、その上で決定は役所組織、教育委員会でやるような感じじゃないと、いつまでたっても学校教育ICTの将来ビジョンは描けないと思いますし、それをやらずに、教育委員会なり役所組織が研究を重ねていたりとか、国が指針を示すのを待っている間に、海外の子どもたちとの差がどんどん開いていってしまうばかりだなと本当に心配しています。特に僕の世代なんかは、まさに今のこどもたちやまだ生まれてきていないこどもたちに将来支えてもらう立場なので、抱いている危機感レベルが高いです。
そこで、教育長に答弁を求めます。
学校教育ICT事業、大阪市は今すでに莫大な予算を投じて展開していて、そういう面では日本全体をリードしていくべき立ち位置でもあると思ってます。そんな立ち位置に立っているからこそ、先駆けて学校教育ICTのあるべき姿、将来ビジョンを民間から広く提案や助言をしてもらった上で策定し、速やかに実行していくべきと考えますが、その必要性とこれからの方向性について、教育長のご所見をお伺いいたします。

答弁:将来ビジョンについて民間に提案・助言してもらうべき

お答えさせていただきます。本当に、杉山先生も高見先生も真摯にこの問題についてお問いかけをいただき本当にありがたく思います。
少しまぁ予定された原稿と違いますけれども…
全ての役人がICTを不得手な部分もあって忌避してるとか、あるいは役所の中ですから予算とか色んなことを気にして後ろ向きなっているというわけでは決してない。
例えば市長の提案で貧困の色んな議論が、今なされています。子どもたちの家庭環境の差のギャップを埋めるために、例えば今提案のあったICTなんかを使って家庭での教育環境を維持するという点については我々も強い意欲を持っています。これは本当にお金がかかり、そしてまた情報漏れなどがあった場合は大きな差支えがあるものでもあるため、そこを丁寧にやっていくという意味で、施策を優先的に採用するという意味において、幅広い市民の方のご理解を得ていく必要がある。
このような真剣な議論を通して色んな方に聞いていただいて、結構なお金を使う事業ですけれども、それをやるということはなにか他の施策が少し後ろになってしまうということも踏まえて、これをやっていくという意味では、できるだけ早くというお気持ちも当然わかりますけれども、十分な幅広い議論といろんな課題をひとつひとつクリアしていって認識を高めていってやるということが一番早道なのではないかと私は思っております。
ただ、今の杉山委員のご指摘の通り、だからといって明確なビジョンやスケジュールをいつまでも示さないというのは行政として問題があると思っています。
そういう意味では、幅広い色んなご意見を今後もいただきながら議論は進めてまいりますけれども、ちょうど今私どもが進めております大阪市の教育振興基本計画がこの年度末で中間を迎えますので、そこで2年前、3年前に策定した時にICTの状況と今の状況はだいぶ違ってきております。そういう現状を十分把握した上で一定のビジョン、そしてスケジュールを見つけ出すような努力はさせていただきたいと思っております。
その中で、全てを民間に預けるというわけではなくて、幅広い理解とご支援をいただくためには民間の知識も活用しますけれども、やはり私どもの行政と議会との色んな議論との中で骨子を作っていくということがとても大事だと思っております。
繰り返しになりますけれども、来年度には現行計画の基本計画の見直しの中で一定の教育ICTの方向性やビジョンというものを打ち立てていきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

まとめ:将来ビジョンについて民間に提案・助言してもらうべき

ありがとうございます、原稿にないアドリブも入れていただいて。
本当におっしゃる通り、時代の流れは早くて数年前に考えていたところと今の状況が変わっているというのはおっしゃる通りで。でもこれって悲劇みたいなもんで、色々教育委員会とやり取りをしている中でも、例えばネットワークの基盤整備をやり直さないといけないとか言うたりすることがありますが、でもそれって今考えても、その当時から判断できたんじゃないかなと思うこと、結構あるわけなんですよね。
で、今教育長は民間に全部やらせずに行政もとかってことをおっしゃってましたけど、本当にそれでいいかどうかは精査しなきゃいけないと僕は思ってるんですよ。行政の職員が本当に相手が言っていることをちゃんと理解しているのか、時代の流れを理解しているのかってところは、ちゃんと精査しないと。さっき高見議員も言ってましたけどWi-Fiの整備にしても、将来こんなんLTEでいいでしょとかって、おそらくその感覚は数年前からIT業界の人間だったらあったと思いますし、そういう感覚を持ったままビジョンを作っていくってことを今非常に求めているところですんで、ぜひともお願いします。
今教育長おっしゃっていただきましたが、民間からの知見も取り入れながら教育ICTの方向性とかビジョンを検討していただけるってことなんで、これは本当にぜひお願いします。
加えて、決してこの分野においては、後進国である日本という国の指針を注視しすぎること無く、民間や海外の事例を注視していただきたいです。だって、海外ではすでにやっているところがたくさんあって、参考になるものがたくさんあるのに、国内の事例とかばっかり参考にしてたって仕方ないんで。ぜひとも今の子どもたちは将来社会に出た時は海外の子どもたちとも競争していかなきゃいけないということを念頭に置いて、じゃあ海外ではどういうことをやってるのかということを注視していただきながら、とにかく大きいビジョンを描いていただきたいと思いますし、それが叶った時、大阪市の学校教育ICTは新しいステージに移行すると思います。大阪のこどもたちの将来のために、よろしくお願いいたします。