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【今後の展望編】Forword with Google for Education参加レポート


先日のブログでも紹介した通り、Googleから日本人で初めての招待をいただき、「Forword with Google for Education」という教育イベントに参加してきました。速報としてYouTube市政報告会を行ったので、全体的な内容はこちらからどうぞ。

イベントの概要、そこで学んだこと、これからやろうと思っていることなどは既に速報としてYouTube市政報告会でお伝えしました。
書きたいことを自由に書き始めると長くなりすぎる懸念があるため、ブログでは
時系列編
講演内容編
ワークショップ編
・今後の展望編
の4つに分けて記事を書いていきます。

 

では、今後の展望編のスタートです。
今回得た知見を、どう扱っていくか。まずは、やはり大阪市の教育にどれだけ影響を与えられるかというところですね。

今回のイベントに求めていたことと、その成果

各国の教育関係者から、様々な共通認識を共有していただけました。
特に、「時代が変化し続けている中で、こどもに与える教育は我々が受けてきたものと同様で良いのか」という点については、参加前から僕自身ずっと疑問に思っていることで、これに対するアンサーを求めて長時間フライトに耐えたといっても過言ではありません。

特に、

子どもたちにとって大切なのは、我々の過去を知ることではない。広がっているバーチャルの世界に生きていくんだから、デジタル時代の中でどのような教育をしていくべきなのか。我々の過去を教えるのではなく、子ども達の未来を教えるべき。学生の将来のために備えてあげる。75%の今の職場はなくなっている。我々はロボットを教育するのではなく、ファーストクラスの人間を教育する。AIに足りない部分を人間に教育するということ。こういう世界に向けて、我々は準備をしていくべき。若者の中でも、明日の世界への準備ができていない子が多い。社会のスピードは加速している。テクノロジーがあるから、世の中がどうなっていくかを考えなければならない。テクノロジーと教育の競争が国レベルで始まっている。テクノロジーは今後どんどん伸びるので、次の時代はテクノロジーを考案できる教育が必要になる。

このあたりの言葉は僕の心をグサグサと刺します。ほんと、素晴らしいアンサーです。
あと、

ナレッジ、スキル。これは明日へ向けて必要なものであることは間違いない。しかし、ナレッジは補完することができるようになっている時代だ。私は、とりあえずわからないことがあったらググれと生徒に言う。ほとんどの知識と情報というのは学校の壁の外にあるのである。歴史や年号などは重要ではない。社会への洞察力が重要。いかに使いこなすか、という力が大事。他の人と連携して働くことができる、情緒的なスキル。勇気、リーダーシップのような能力。ソーシャルスキル。これが非常に大切になってくる。

このへんも、すごく良いなと思いました。

いかにして政策提言していくか

ただ保守的に、これまでのことを繰り返すのではない。新しいものを取り入れて、古いものを切り捨てる。そういう政策を、政治家が推進していかなければならない。

こんな言葉もありました。本当に、おっしゃる通りです。大阪のみならず日本全体でカナリ危機感を抱かなければいけないような状況です。政治家という立場で参加させてもらっている以上、僕には何らかの動きをする責任が伴っていると感じていますし、そのために必要な情報を各国の教育関係者からたくさん与えていただいたと思っています。

加えて、ただ単に講演内容をまとめればこういうことだよね的な政策提言ではいけないと思っています。国によって、事情は違います。でも、だからこそ逆手に取ることができるものもあるんじゃないかなって思ったりもします。とにかくしっかりとしたボールを投げて、議論に発展させていくことが今僕自身に課せられている使命だと肝に銘じて、政策提言をしていきたいと思います。

画一的、統一的な日本の教育を逆手に取り、テクノロジーを活用した効率化を図るべき

まずは、テクノロジーによる効率化です。
講演内容編を読んでいただいた方(長かったのにありがとうございます)なら理解されていることかと思いますが、教員が学生に与えるべきものは「我々の過去やナレッジ」ではもうないと言えるでしょう。そんなものは、検索すればヒットする時代です。社会に出た時、100%のナレッジを求められることなんてありません。Googleの採用担当者ですら、「人々が100%のナレッジを持っていること、というのは入社時には期待しない」と明言しています。「これからの社会に必要なスキル」を身につけさせてあげることこそが、現代の教育に求められていることであり、それを実現するためには教員と学生の関係性・信頼性、つまりエンゲージメントの構築が必要であると、各国の教育関係者からは示唆されていました。

しかし、それを大阪(日本)で実現しようとすると、まずは教員の数が足りていないという問題にぶち当たります。今、すでに限界の状態なのです。ここから更に何か新しいミッションを与えるというのは無理筋ですし、そうすべきではないでしょう。では、どうすればよいか?ここに、テクノロジーを取り入れる大義があるわけです。

まずは、教員の負担軽減という文脈での効率化。具体的には、カーン・アカデミーの大阪(日本)特化バージョンを用意し、知識を詰め込むという作業はそこに一義的には丸投げをするべきではないでしょうか。教員がカリキュラムをゼロから作ったりする必要はありません。だって、どうせ学習指導要領の通りにやらなきゃいけないし、教科書も指定されてるし、そもそも自由度なんてほとんどないんです。画一的、統一的な日本の教育がダメだ!という意見があるのも十分承知していますが、そこを変えるよりも随分と政治的なパワーを使わずに実現でき、教員にとっても負担を軽減でき、学生にとっても教員の質に一切左右されることなく画一的、統一的、公平、公正、平等に知識を得る機会を与えることが可能です。

吉村市長が学力テストの件で打ち出した方針に、現場から反対の意見がたくさんあることを僕自身も承知していますし、思うことがないわけではありません。(ただし、学力の経済学の著者である中室牧子氏 ※大阪市総合教育会議有識者 の教育に対するエビデンス重視の考え方には賛同しています。制度設計に深く関わっていただきたいと願っています)

反対意見の中には、「学校は学力だけを養う場所ではない、それだったら塾にだけ行けばいいということになる、他の能力を伸ばすことも教員の仕事なんだ」という意見があり、それも最もな意見だと僕は感じています。なので、「学力を養う」という点において、一義的には先述のような方法で補完すれば良いのではないでしょうか。他の能力を伸ばすことこそが現代の教員に求められていると仮定するなら、余計にそうすべきだと僕は思うのです。そして、今回のワークショップで出たアイディアのように、動画を見ている生徒の理解度を判定するロジックを機械学習のテクノロジーを使って搭載させておく。そして、そこから得たデータから学生1人1人の学習理解状況に応じて、「超・習熟度別学級」をバーチャルで構成する。

習熟度別学級は、「学力の経済学」でも指摘されていましたが、学生の学力を向上させるという目的の施策において、コストパフォーマンスがとても高い施策だとされています。しかし、現在の大阪市の習熟度別学級が一体どういう状況かと言うと、実は厳密な習熟度別学級の構成になっていないのです。「うちの子どもはもっと出来る」という親の願望・クレームも作用していますが、最終的には教育委員会が腹を決めることができていないので、厳密な習熟度別学級というものが実現できていないというのが現状です。

母集団が少ない中で構成しようとすると、習熟度にも幅が当然出てきますし、本当の意味での習熟度別学級を求めるなら、テクノロジーの力を利用して、先述したような「超・習熟度別学級」をバーチャルで構成し、バーチャル教員が本当にそのレベルに合った授業を行えば、同じところでつまずいている学生で構成されている集団のため、教えるべきポイントが絞られているという状況からスケールメリットを出すことが可能になり、1人の教員につき40名という縛りなど必要なく、一気にかなりの大人数を相手にすることが可能になるのでは?と思っています。そして、それは最終的に「学力の向上」にも寄与するのではないかと思うのです。

教員同士の横の関係性が非常に大切だという指摘も、各国の教育関係者から共通していた内容でした。テクノロジーの力を活用することができれば、1つの学校という単位に縛られなくても、市単位・国単位でも横のつながりを作ることが物理的には可能です(あくまでも、物理的には)。みんなで「教育という事業」を行っている、という状態を作ることが大切だという指摘もありましたが、テクノロジーの力を活用することで光が見えてくるのではないでしょうか。

こうした効率化で教員に絶対的に求められる仕事量を80%でマネジメントし、残りの20%を教員同士の学び合いに使ってもらう。そういうことが必要だと僕は今、感じています。

教員をモチベートするためのスモールサクセス

イノベーションとは、アイディアに対してリスクを取らなければならないものだという指摘がありました。本当に実現するためには、教員の方も教育委員会の方も、そして我々政治家もリスクを取らなければいけません。常にイノベーションは、居心地の悪いところから始まる。だからこそ、みんなをモチベートするために手の届く目標、スモールサクセスが必要ということになります。

このスモールサクセスを具体的にどのようなものにすべきか、その答えを僕は今持ち合わせていません。というのも、これは現場の声を吸い上げながら決めないと、手の届く目標になりえないからです。僕の物差しだけで決めて良いものではないと思うので、このへんに関しては広く議論をしていきたいと思っています。そんな中であえてひとつ提言するならば、まずは個々の教員がカリキュラムを作ることをやめること。なにかを新しくやるわけではなく、やっていたことをやめる方向性のほうが実現しやすく、それによって生まれた時間を1人1人の学生に使ってみる、ファシリテーターへの転向という実践によって教員と学生のエンゲージメントが向上するというスモールサクセスを得ることができるのであれば、一歩目として素晴らしいのではないかと考えています。

大切なのは、

「教師たちは2週間ごとに不安になっている、しかし状況は常に変わっていくもので、それが当たり前だ。」

この文化を大阪(日本)でも当たり前のものとして捉えるマインドセットでしょうか。

プライベートクラウドからの脱却、パブリッククラウドへの移行

これは昨年から大阪市会での質疑で僕が取り組んでいるテーマでもありますが、やはり今回さらなる確信を得ました。すぐにでも、今の古い考え方を捨て去るべきです。昨年のやり取りの中で、サーバーは国内に置かなければならず、パブリッククラウドではそれが担保できないというような主旨の回答がありましたが、例えばGoogleの場合はプラットフォーマーとして国内サーバーでの限定運用が可能だとしており、実際に事例もあるようなので乗り越えられる壁です。セキュリティの可用性・それに伴う本当の意味でのセキュリティという観点から見ても、現在のプライベートクラウドの運用よりもパブリッククラウドへ移行したほうがリスク低減につながると思いますし、その壁を乗り越えることで教員にとっても学生にとっても、保護者にとっても利便性の高いツールを使用することが可能になります。

教員から配られたプリントを家に持って帰って親に見せるのを忘れていた、それに伴う連携ミスで学校側と保護者側での意思疎通がうまくいかないなんていう、この時代にナンセンスで愚かな現象も未然に防ぐことができるようになります。わざわざUSBメモリを使用する必要性もなくなるため、教員がUSBメモリを紛失して個人情報が流出するという避けようのないヒューマンエラーも仕組みにより防ぐことができるようになるでしょう。

教育委員会とベンダー間の関係の見直し

各国の教育関係者が、この問題については共通の悩みを抱えていることがわかりました。特にスイスでは既にそれ専用の職業が出来るなどしているということも、紹介しました。大阪市やオーストラリアのキャンベラにおいては、現在やられ放題の状況にはなっていないものの、あくまでも属人的な対応ということです。

例えば、現在大阪市に納入されているタブレット端末はWindowsタブレットです。公開授業に参加させていただき実際に授業も見ましたが、動作もモッサリしているし、授業で使っているアプリケーションは社会でどの程度使われているアプリケーションなんでしょうか。そもそも、教育ICTに必要な機能とは一体どのぐらいの範囲なのでしょうか。

例えば、皆さんがパソコンの購入を検討したとします。どのぐらいの予算で、どのような機能を備えたパソコンを買いますか?という話です。一言でパソコンと言っても、値段の幅は広いですよね。例えばMac Proを買うとすると、30万円とか40万円とかです。一般的なユーザーは、高い!買わないよ!となるでしょう。でも、映像編集の仕事をするような人からすると必要なスペックになりえるのです。そこで皆さんは思うでしょう、「別に映像編集とかしないし!」と。だから、必要な機能だけ備えておいてくれたらいいよ、と。まさに、そのことを言っているわけです。教育ICTに最低限必要な機能とは、一体どのぐらいのスペックなのだろうかと。

動画編集は必要ない、画像編集も必要ない、表計算や文書作成、プレゼンテーションは使いたい。それなら、ブラウザベースで使える表計算や文書作成、プレゼンテーションは既にMicrosoftもGoogleもリリースしています。あれ?もしかして、ブラウザだけしか使わない?それなら、ブラウザベースのOSでもいいんじゃないの?となる。つまり、Chromebookが最もコストパフォーマンスが高いのでは?と。ちなみにこの思考回路で、既にアメリカやスウェーデン、ニュージーランド、カナダではChromebookが教育現場でのトップシェアになっています。

僕は教育委員会を責めているわけではありません。そりゃ、そんな専門的なことわかるはずがないんです。ベンダーを責めているわけでもありません。そりゃ、儲けなきゃいけないですし。でも、税金の使い道として決して少なくない額の予算が割り当てられているこの領域において、現在の関係性が良いとは、僕には到底思えない。本当に教育現場に必要とされているものは一体なんなのか、今一度、学生目線に立って考えていくべきです。キャンベラの学生たちが立ち上がり、当時の納入デバイスの起動時間と、求めるデバイスの起動時間を比較した動画を作ったように。僕、作ろうかなw

Googleと私学校にお願いしたいこと

これは大阪市会議員という職責からは到底手の出しようがないところになりますが、Teacher Centerで得られる認定プログラムを私学校教員採用でアドバンテージと認めてもらえるような動きを、Google及び私学校側で推進していただけると、その波はきっと公立校教員にも波及するだろうと思っています。とにかく、これからの時代を担う教員としての箔がつくような認定プログラムとして広く認知され、こぞって教員が認定プログラムを取得するような流れを作ることができれば、全体的な底上げにつながっていくよねという考え方です。

なんで先生になりたいと思ったか?子供に何かを教えたい、それが教育の原点でしょ。それがモチベーションなら、解決できるんだよ。成長、発展、そういうマインドセットを持っていれば教師も育っていける。

この言葉を重く受け取っていきたいです。

最後に

今回、Forword with Google for Educationに参加させてもらって本当に良かったです。各国の教育関係者達とこれからもつながりを維持していきたいと思いますし、参加者の皆様もそういうことを思っているようです。各国の教育関係者たちがもっと日常的に、新しく取ったリスクやその結果を共有し、この激動のテクノロジー時代を生き抜いていく全世界のこどもたちのために出来ることを考え抜いて、提供していく流れを加速させていきたいなと、心から願っています。

そして、多分もっと書けることはあると思うんですが、ある程度ホヤホヤの状態で出すことに意味がある(インテリジェンスリスクテイキング!)と思うので、とりあえずこの状態で公開します。フィードバックをお待ちしています!